「犬派ですか、それとも猫派ですか?」
という設問と分類をあちこちで目にします。
これはもちろん文字通り、犬が好きか、猫が好きか?という分類なのですが、時と場合によって、この設問には言外に
「犬派の人は犬が猫よりも好きで、犬が猫よりも優れていると思っている」
「猫派の人は…以下同」
というニュアンスが混ざっていると感じることがあります。
実際に、犬派バーサス猫派という形式で「どちらがより勝っているか」という議論になるのを見たこともあり、私はそういうニュアンスで考えたくはないので、訊かれると困る質問です。
「犬派ですか、猫派ですか?」と訊かれると、私はちょっと考えてから「…猫派です」と答えます。私の家には猫がいて、猫たちを愛してやまないので。
だけど、そこでいつも「でも、犬も大好きですよ!」と大声で付け加えます。
犬も大好きです。猫とは違う性格や習性、飼主の愛し方、見ていて飽きないなと思うし、犬とも一緒に暮らしたいなあと思います(家人にこれ以上は無理と言われて断念するのですが)。
犬派、猫派の話とはずれるのかもしれないのですが、個人的に「獣医師が診ている動物種」も、この話に少し通じるものがあるような気がします。
獣医師は、特定の動物種を対象にしているエキスパート専門医を除いただいたいの獣医師は、犬、猫をはじめとする複数の動物種を診ています。
犬、猫、これはほとんどの病院で診ている動物種でしょう。
うさぎ、フェレット、ハムスター、モルモット、このあたりまでは、診療動物に掲げられている動物病院も多いんじゃないでしょうか。
ハリネズミ、デグー、リス、フクロモモンガ、鳥、爬虫類や両生類、このあたりになると、診る病院と診ない病院とが分かれてくる印象です。
そして、動物病院に掲げられている診療動物の中でも、その獣医師が「より多く診ている動物種」が、当たり前ですが存在します。私は以前、漠然と、どの動物病院にも犬が一番多く来院されているんだろう、くらいのイメージを持っていましたが、そうとは限らないということを、動物病院で働くようになって知りました。
この病院では猫が多く来ているとか、あとはここにはウサギが多い、カメが多いとか。
何でそうなってくるのかは、やはり口コミ的なものとか、紹介とか、そういう流れで、自然に少しずつ変化していくのだと思います。
多く診ていると、当然経験値も高くなります。動物病院選びに迷われている患者さんからしたら、そういう、動物病院の「経験値」の部分が、知りたいけどなかなか知りえないところかもしれません。動物病院側も、来院している動物種の百分比などは情報として公開したほうがいいのかもしれない、とは思っているところです。
ただ、ここでジレンマというか、難しいところは、
ある動物種がたくさん来るようになり、経験値を積んで、それがまた呼び水となってその動物種がさらにたくさん来院されるようになることは、もちろん嬉しいことなのですけど、
診るほうは、たくさん診ている動物以外の動物種も、やっぱりもちろん診たい!と、思っているはずなんですよね。
「ウチには猫が多く来ている、経験値も多く積んでいるし得意だけれど、…でも、犬もウサギも好きだし勉強しているし、もっと診たいです」
とか。
今よく診ている動物種と、診たい動物種が乖離していくことは、嬉しさもない交ぜではありますが、ちょっと残念なことでもあります。
もちろん、逆のこともあると思います。
「診療動物にはモルモットと書いてあるけれど、実はそんなにたくさん診ているわけじゃない。やれるだけのことはするけど、症例が複雑になってくると、難しいです」
など。
開業する前、修業中は、自分のスキルアップのことだけを考えていればいいのですが、開業してからは、こういう、普段肌で感じている「経験値」の部分を、もっと正確に把握しないといけないな、と思うようになりました。
一次病院、いわゆる「かかりつけ医」として開業している獣医師は、自分の得意不得意、経験値をきちんと把握して、経験値を積む努力はもちろんですが、「この動物種のこの病気は自分ではスキルが足りないから、別の病院に紹介する」など、はっきりとした道筋をつけるのが重要ではないかと考えています。
もちろん、深いところまで診るために、診察する動物種を絞るのもひとつの選択肢でしょう。
ただ、私は、いろいろ考え方はありますが、どの動物も好きだし診たいので、幅を狭めることはせずに、「不得意をなくす」努力を続けたいと思っています。
私は今のところ、件数的には猫を診ることが多いのですけど、ここで最初の話に戻るのですが、猫は好きだし得意だけど、犬もウサギも鳥さんも、他の動物も好きだし診たい!と、思っているわけなのです。
獣医師 緒方

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