今年の4月に動物病院を開院したとき、「開院したらやってみたいこと」がいくつかあって、そのうちの一つが「鳥さんを病院で飼いたい。できたらカメさんも」でした。
私事で大変恐縮なのですけれども、私は高校時代にセキセイインコを飼っていたことはあるのですが、それ以降は飼ったことがなく、鳥の診察について勉強するためにも、飼ってみたいなあ…と常々思っていました。
家には猫がいるから同居が難しいので、自分の病院が出来るとなったときに、そこで飼ったらどうだろう?と思っていたのです。
カメさんも、リクガメのあの何ともいえない動きを見るたびにとても癒され、これもまた、カメの診療技術の向上も兼ねて、病院で飼えないだろうか…?
そして、開院してからの9ヶ月あまり、鳥さんを迎えようか、カメさんを迎えようか、ペットの里親募集のページを眺めたり、飼い方の本を読んだり、インターネットでいろいろ調べたりしながら悶々とし続け、…しかし、全く話が進んでいないというのが、現状です。
こうやって真剣に考え始めると、ペットを迎えると決めるときの勇気、決断力、半端ない…!と、思わずにはいられません。
私は猫を三匹飼っていますが、一人目は、譲渡会に来ていた猫ちゃんの足が悪く、貰い手がいなさそうだったので、私が貰おう、と決めることができました(これも今となっては、よく決断したなあ私、グッジョブ、と思わずにはいられません)。
二人目は、勤務していた動物病院のスタッフに拾われた子でしたし、三人目は、診ていた患者さんのご家族が拾われた子で、家にももう先住猫がいるから、だいぶん気持ちの敷居も下がり、すんなりお迎えすることが出来ましたが、
新しい子、それも今まで飼ったことが(ほぼ)ない生き物を家に迎えるって、本当に決断するのが大変…!
まず鳥さんは、基本ケージで飼うことになるのだけど、病院なので夜は人がいなくなるから、夜一人で寂しくないだろうか…?とか、暑さ寒さの調節はできるんだろうか、日光浴が必要らしいが病院は北向きなんだけど…!?とか、
インターネットであちこち眺めては、オカメインコさんは寂しがりやが多いらしい…!など、いろいろ(真偽のほどはおいておいて)情報を入れ続け、自信をなくしていくのです。
カメさんについても、リクガメの場合はもともと日本にいない種類だから、気候が合っていないので、ライトやヒーターを使って、できるだけちょうどいい環境に整えてあげる必要がある。スポットライトを12時間おきに点灯と消灯、…ちゃんとできるのか!?とか、
リクガメよりも、そもそも日本にいる種類、ゼニガメとかを飼うのが妥当なのかも?とか、
カメさんの種類によっては冬眠する。冬眠させるべきか、そしてもし冬眠した場合、無事、春になったら起きだしてきてくれるのか!?とか、
本当に、心配はとどまるところを知りません。
動物病院にこられる飼主さんにも、「犬(あるいは猫、ウサギなど)を飼うのが初めて」という方が多くいらっしゃいます。
最初とても不安そうにしていらっしゃる方も多く、「大丈夫ですよ」「すぐに慣れて楽しい生活が送れますよ」という気持ちを込めて、いろいろお話させていただくのですが、鳥とカメのことで悩んでいる昨今では「いや本当に、最初ペットを飼うときって不安ですよね…」という、飼主さんに共感する気持ちが、実感として込められるようになってきたなと思います。そういう意味では、悶々とし続けているこの9ヶ月も無駄ではない…のかも、しれません。
今回、鳥とカメのことも含めて、いろいろ考えたのですが、
私が「ペットを飼うのが初めて」という飼主さんにお会いしたとき、最初に思うことは「決断してペットを迎えてくださって嬉しいです」という気持ちのような気がします。
また一人、ペットとともに暮らす生活を送ってもらえるから、きっと幸せなはず、幸せになっていただけますように!という祈りも込めて、本当に嬉しいです。
だから、ペットを飼おうか迷っていらっしゃる方には、つい「飼ったほうがいいですよ」「ペットとの楽しい暮らしが待っていますよ」など、言いたくなってしまうのですけど、…でもそればっかりは、やっぱり、いくらペットを飼いたくても、環境その他もろもろの理由で飼うのが難しい方もいらっしゃるんですよね。無理して飼うことで、将来飼主さんに負担が圧し掛かってしまう可能性だって勿論ある。
でもでも、えいやっと一歩飛び出して、思い切ってペットを迎えることで、より充実した生活が送れるようになるかもしれない。
まだこれから何が起こるかわからない、未来のことをいろいろ考えても、結論は出ないのですが、やっぱりどうしてもいろいろ考えてしまう、…こういうときいつも意識するのは「後悔しないように」ということのように思います。
診察でもよくお伝えします。治療について、複数選択肢が出てきて、どちらにもメリットとデメリットがあり、どちらが良いかは一概に言えないようなとき、…やはり特に、その子の命が懸かっている場合によく直面するのですが、
どうやって治療方針を選び、決めていくのかは、もちろん選択肢を提示するこちらも勉強して、知識や経験を積み上げた上で、やはり最後は「後悔しないように」よく考えて、選んでいただく、ということになってくると思います。
私もずっと9ヶ月、鳥さんとカメさんについて迷っていますが、このまま生涯、鳥もカメも飼わずに終わってしまうとなったら、やっぱり後悔すると思うので、
まだ時間はかかりそうですが、少しずつ環境を整えて、勇気を蓄えて、えいやっと思い切って、お迎えしたいなあ、できたらいいなあ…、と、思っています。
獣医師 緒方
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