7月上旬、西日本豪雨の後から始まった猛暑は、まったく落ち着く様子もなく続き、まだまだあと二週間程度は続く見込みのようです。
この暑さで、人や犬はもちろんですが、猫も体調を崩すケースが増えているように思うので、自宅の猫の様子も交えて、報告させてもらおうと思います。

本来、猫は犬に比べて暑さに強いという印象です。
犬は体温があがってきたら、パンティングという、舌を出してハァハァと早い息をつく呼吸をして体温を下げていますが、体温が下がりきらなかったり、呼吸器に問題があって上手く体温調節ができなかったり(パグなどの短頭種に多いです)、そういうときに熱中症となり体調を崩してしまうのは、犬の飼主さんを中心によく知られているところだと思います。

対して猫は、よっぽどの興奮状態でなければパンティングをしないという印象です。
高いところに上ったり、隙間に入り込んだりして、上手く気温の低いところを見つけ、そこで暑さをやり過ごしているようです。
エアコンをつけても、エアコンの効いている部屋から出てしまったりしますし、必ずしもエアコンで部屋の温度を下げることは好まれないので、私の家では、留守中にエアコンをつけることはせず、できるだけ風が通るようにだけ気をつけています。

ただ、そうやって猫なりの暑さ対策をしても、それ以上に暑くなってしまうと、どうしようもなくなってしまいます。
うちの猫たちは、見ている範囲では、水を飲む回数が増えました。それで体温や体調を調節しているのだと思います。
今のところ元気食欲は問題ないので、ほっとしていますが、もともと水をあまり飲まない子だったり、腎臓や心臓に基礎疾患があったり、高齢の子だったりで、うまく水分の調節ができないと、体調が悪くなってしまうことがあります。
症状としては、食欲が落ちる、吐き気が出る、など、犬に見られるような典型的な熱中症の症状ではないけれど、熱中症の手前、「夏バテ」のような状態でしょうか。

夏バテの状態で済んで、回復してくれたらいいのですが、特に猫ちゃんは、食欲がなくなると、吐き気と連動して急激に体調が悪くなることがあります。
吐くことによって脱水もすすみますし、脱水してしまうと腎臓をはじめとした内臓に負担がかかり、悪循環に陥るような状況です。
そうなったときは、早めに点滴など治療をしたほうが回復も早いですし、体調が悪くなりすぎると入院が必要になってしまうケースもあるので、できるだけ早く動物病院に行かれることをお勧めします。

体調が崩れる前に、家でできる対策としては、何とか水分を取ってもらうことですが、飲水が難しい場合は、水気の多い缶詰やパウチなどを食べたり、可能ならばスポイトなどで水を口に含ませたり、といった方法があります。
スポイトを使うのは、嫌がる猫ちゃんも多いので、させてくれればですが・・・。

エアコンも有効なのですけど、エアコンを嫌がる猫ちゃんも多いですし、逆に冷えすぎて体調を崩すケースもありますので、猫ちゃんが自分でちょうどいい場所を見つけられるような配慮が必要かと思います。
うちの猫について言えば、一匹はエアコンの風を浴びて涼んでいますが、一匹はエアコンの部屋から出てしまいますし、残り一匹はエアコンから少し離れたところにいて、ほのかに冷気が漂うくらいがいいようです。

エアコンをつけていたのに、猫ちゃんが自ら暑い部屋を好んでしまい、体調を崩してしまった・・・という場合もあります。
どうも、お気に入りの場所、安心できる場所が、暑さより優先される傾向の子もいるみたいで、そのときは、水を飲ませたり、濡れタオルを被せて体の熱を取ったり、といった対応も必要かと思います。

ワンちゃんよりも、暑さに強く、熱中症になりにくい印象のある猫ちゃんですが、ひとたび体温の上がりやすい状況に置かれると、猫ちゃんならではの特性も手伝って、体温や飲水のコントロールを行うのはとても難しいと感じます。
毎日気をつけてもらうのはもちろんですが、様子がおかしいなと感じたら早めに動物病院に連れて行き、点滴などの処置を受けられることをおすすめいたします。

まだまだ暑い日が続くようです。気象庁の会見では「災害と認識」と言われているようで、そのとおりだなと感じます。ペットちゃんたちも、飼主様も、体調に十分気をつけて、無事に夏を越えられることをお祈りしております。

獣医師 緒方

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