※動物にはほぼ関係のない内容、長文です。ご興味あれば読んでいただけますと幸いです。

11月にお休みをいただいて、副鼻腔炎の手術をしてきました。
私はもともと鼻炎を持っていましたが、異常を感じ始めたのは、もう6年くらい前から、においがわからなくなってきたのです。
近所の耳鼻科に行くと「副鼻腔炎がある」といわれ、薬を飲んだりもしたのですが、薬を飲むと少しマシになるけどまたすぐ悪化する、の繰り返しでした。
もうこの2年くらいは、全くにおいのわからない状態で、もうこれはいよいよ、手術も視野にいれて考えなければならない・・・!と、意を決して、手術も実施している大きな耳鼻科にかかったのが、7月のことです。

診察してもらい、CT、血液検査、バイオプシーと検査をして、ついた診断名が
「好酸球性副鼻腔炎」です。
それまでは、副鼻腔炎というと、いわゆる蓄膿症、副鼻腔に膿がたまる病気しか知らなかったのですが、好酸球性副鼻腔炎は、炎症がポリープ状になって鼻の中を塞ぎ、それでにおいがわからなくなる、というものです。内科治療ではステロイドしか効果がないうえ、再発率が高く、数年前に難病指定もされて、治療はなかなか困難なのだということ。
再発率は高いが、手術してポリープを取り除いたほうがいい、ということになり、手術していくことになりました。
手術と入院を経験して、自分がやっている動物医療のうえでもいろいろと勉強になったし、副鼻腔炎の手術をお考えの方の参考にもなればいいと思い、書き残しておくことにします。

入院は二泊三日でした。全身麻酔での手術も入院も生まれて初めてで、しかもネットなどでいろいろ見てみると、副鼻腔炎の手術は大変とか痛いとか書いてあるし、気がかりもありましたが、何より鼻の状態が改善するのが嬉しく、全身麻酔といっても開腹するわけじゃないし・・・と、緊張や不安はほとんどなく当日を迎えました。
手術日の朝に入院し、麻酔の説明を受けたり着替えたり点滴したりして手術の時間を待ちました。麻酔医の先生に使う薬の名前を聞いたり、点滴は何を使っているのかとか、オペ室の様子とか、そういう細かいところが気になって、あっという間に時間が過ぎ、自分で歩いて手術室へ。
麻酔薬が点滴ラインの側管から入れられるのが見え、えっ、これから私意識なくなるの??いつ??と、さすがにどきどきし始めて、麻酔医の先生が酸素マスクを私の口に乗せ「これから寝てもらいますねー」と言われたところで、記憶は途切れました。本当に、すうっと意識が遠のくとかではなく、パッと切り替えられたような感じです。
次に意識が戻ったのは、気管チューブが抜かれる瞬間。あー今抜けたわ、とリアルな感覚がありました。その次に「終わりましたよ」と声をかけられた瞬間や、担架に乗せられた感覚、入院室のベッドに移動したときなど、断片的に記憶があります。

手術内容は、ESS(内視鏡下副鼻腔手術)です。小さな道具を鼻の穴から入れ、CTの映像と照らし合わせながら、少しずつ病巣を除去していき、鼻腔と副鼻腔の隔壁を開放する、というものです。
どういう道具を使うのか興味があって聞いてみたら、わざわざパンフレットを持ってきていただいて見せていただきました。吸引しながら削り取るような小さな道具、手入れも大変だし、すぐに壊れそうで、本当に耳鼻科の道具は繊細です。

手術後、鼻の痛みは全くありませんでした。ガーゼとスポンジが詰められているのですけど、どういう仕組みか、鼻で息をすることはできました。それよりもそのときは、喉がすごく痛くて、呼吸するたびに痛いので、そちらのほうが大変でした。
気管チューブの影響かなと最初は思っていたのですが、喉の痛みや発熱、だるさといった風邪のような症状は退院してからもしばらく続き、手術の影響で免疫力が落ちて風邪をひいてしまったのか、結局はわからずじまいです。

手術時間は2時間でした。術後3時間はベッドで酸素吸入し、生体情報モニターもつながれています。私はその3時間、ずっと起きていて、喉が痛い!と思いながら、懸命に呼吸をしていると思っていましたが、実際のところは、3時間のほとんどは寝ていて、所々眼が覚める程度だったようです。
呼吸も、麻酔の影響で体が動きにくいのか、意識して肺を動かさないと呼吸できないという感覚がありました。ちゃんと呼吸しなければ!という恐怖にも似た感覚は、次の日の朝くらいまで続き、夜もあまり眠れなかったように思うのですが、術後と同じで、実際のところは寝ていたのかもしれません。
動物の手術でも、術後呼吸が戻ってきたら一安心で、もう大丈夫と入院室に戻したりしますが、呼吸をしているほうは、まだまだ楽に呼吸できるようになるまで時間がかかるのね・・・と、反省をこめて実感しました。

3時間がすぎたら、離床、起き上がってトイレなどに行ってみるよう促されます。全然身体も動かないと思っていたのですが、動かしてみると普通に起き上がれて、トイレに行き水を飲むと、もうあとは好きなように時間を過ごしていいと言われました。食事も出て美味しくいただきました。
鼻の痛みはありませんが、詰めたガーゼの奥から、少しずつ血液が染み出してくるので、綿球をときどき交換しながら、早々に寝支度をして消灯しました。

翌日の朝8時から、先生による回診。
ここで、昨日の手術時に鼻に詰めたガーゼを抜く処置があります。副鼻腔炎の手術では、手術に次ぐハイライトで、ネットではものすごく痛いとか書いてあるんですけど、痛いという感じはあまりなく、どちらかといえば気持ち悪いという感じでした。
左右の鼻先に詰められていたスポンジをポンと取って、その奥に入っていたガーゼを1枚ずつ取り、「この奥に、左右2枚ずつガーゼが入っていますから、順に取っていきますね」と言われたときは、この奥にさらに2枚も入ってるの!?とだいぶ驚きました。
取るときは、ピンセットを奥まで入れるようなことはなく、おそらく上手い具合にガーゼが取れるようにしてあるのだと思うのですけど、するすると細長いガーゼ(ガーゼというよりは、細い包帯を切ったような形状です)を引き抜いて終わりなのですが、ガーゼが取れていく感触を、眼の下あたりで感じて、ああーすごい奥にガーゼが詰まってるううー・・・!と顔をしかめている間に処置は終わります。

抜いたガーゼを膿盆に乗せると、こんなにたくさん入ってたのか・・・!という量です。写真撮らせてもらったらよかった・・・とあとで思いましたが、さっと片付けられてしまいました。
そのあとは、まだ出血があるので、また新たにガーゼを詰めて(そんなに奥までは詰めません)終わりです。夜の回診でそのガーゼを取ったら、もう出血もほぼ止まっていました。
術後は鼻の粘膜部分が傷ついているので、そこの痛みをとるために、局所麻酔薬を染み込ませたガーゼを使われているようでした。それもあってか、痛みはないか、あっても短時間でした。痛いというよりは、鼻の奥にガーゼを詰め込まれるのが怖い、気持ち悪い・・・という感覚が強くて、それも、手術も終わった今となっては、鼻の奥を触られる感触にも慣れてきたふしがあります。

そのあとは1日やることもなく過ごすのですが、前の日の手術と、そのあとあまり眠れなかった(気がする)のと、あとはガーゼが取れた安堵で、家族が面会に来てくれた以外は寝ていました。先生は笑顔で「いつも忙しい分、今日は暇をもてあましてくださいね」と仰っていたけれど、もてあます暇がなかった・・・。

その翌日の朝、回診後に退院でした。
入院する前は、退院したらどこかに寄って帰ろうかなあ、くらいに思っていたのですけど、風邪様の症状が続いているし、鼻もまだ少しずつ液体が出てくるしで、全くそれどころではなく、家に直帰してそのまま寝ました。退院後、何日かは薄い血液のような液体が出てくるし、鼻がかめないので、鼻が終始詰まったような状況で、その数日はなかなか大変でした。

退院の次の日に検診へ。そこでは詰まった液体を吸引してくれて、鼻はすっきりするのですが、まだ治りかけの鼻粘膜を触るので、ジンジンして痛いです。正直オペ後よりも、検診のときのほうが痛いです。
処置は数秒なので、あああーとか言葉にならない間に終わりますが、鼻の粘膜が治ってきたら痛みも治まるはずなので、ここはやり過ごすしかないですね・・・。先生の手際が恐ろしく良くて早いのが救いでした。

退院から二日して仕事に復帰したのですが、鼻は詰まってるし液体は出るし、あとはやっぱり、手術と入院で体力が落ちていたみたいで、一週間ほどは休み休みなんとか仕事をこなすといった感じでした。
麻酔とか手術とかってやっぱり身体に負担がかかるんだね・・・術後の動物たちも、今以上に注意してケアしなければ・・・と、思いを新たにしながら働くうち、幸い体力も戻り、術前と同じように生活できるようになって、ほっとしています。

手術後、鼻粘膜が回復するにつれて、劇的ににおいもわかるようになりました。副鼻腔が開通したおかげか、鼻の通りもよくなり、鼻炎の症状が出ることもなくなり、本当に手術してよかったと思っています。これから再発防止のため、定期的な検診と家でのケア(鼻うがいなど)は続くし、再発してしまうかもしれないけど、とにかく今は、やってよかったという気持ちでいっぱいです。
鼻の病気は生死に関わるわけじゃないし、と、私も長い間放置してきましたが、やっぱり生活していく上ではとても重要だと今回実感しました。もし副鼻腔炎を抱えられていて、手術を迷われているようでしたら、一度手術もされている病院にかかることをおすすめします。
手術していただいた病院の先生は、朝8時からの回診に始まり、手術を何件もこなして、夜の回診も19時を過ぎることもあり、一日中忙しくされていますが、その中でもいつも笑顔で丁寧に接していただき、本当に頭が下がる思いでした。自分がこれくらい忙しい状況にあるとき、一人一人の患者さんをこれくらい丁寧に診ていくことができるか・・・。これからも心していかなければいけない、と思わされました。

長くなってしまいましたが、ざっと手術と術後の経過を書きました。まだ鼻粘膜を治している途中で、治療は続きますが、とりあえず今の状態は良好です。皆様にはご迷惑をおかけしてしまったのですが、たくさんご心配いだたいて、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

緒方

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