コロナウイルス問題が深刻化する今日、
私も存じ上げていますが、獣医師でありウイルス研究者でもある、宮沢先生の情報発信を目にしました。
詳細は、→宮沢先生のツイッター を参照していただければと思います。

宮沢先生のコメントにもありますが、
今後ますます猛威をふるうであろう、新型コロナウイルスに対抗するすべとして、
自分を感染者(無症状感染者)として振る舞う という考え方に、
もしかしたら、自分の知識も役に立つかもしれない、と思い
記事を書くことにしました。

動物医療界、特に猫、それも保護猫の界隈では、
猫にとって世にも恐ろしい「パルボウイルス」という感染症があります。
感染力も強力、さらに、普通の消毒薬では全く死滅しません。かかったら死んでしまうことも多いです。
そういう意味では、新型コロナウイルスよりも(猫にとって)怖い存在です。
保護猫のシェルターや、動物病院では、どうしてもこのパルボウイルスに遭遇することがあり、
そのときに、感染を拡げないための考え方があるのですが、
今回その考え方について、できるだけわかりやすく書こうと思います。

※ここから下は、適宜
「パルボウイルス」→「コロナウイルス」と書き換えて読んでもらい、
個々人のウイルス対策に役立ててもらえれば幸いです。

◎ウイルスを自分が持っているという考え方

1、パルボウイルスが発症したとき、
→患者が暮らす家のなかのもの全ては、ウイルスまみれである。
感染源は自分である!!
自分が持っているもの、身に着けているもの、全てにウイルスがついている可能性がある!

2、ウイルスは患者のどこから出てくるか?
→涙、鼻水、唾液、汗、尿、便
体から出る、ありとあらゆるものがウイルスまみれである!
○特に気を付けるべきなのは、
「唾液」「便」
あと、体液が着く可能性が高い「手」

3、自分が外を出歩くとき、
それは、ウイルスをばらまくとき、と同義である。
→外で声を発する、食事する、口から大きく息を吐き出す、
その全ての行為で、大量の唾液と、唾液に入ったウイルスが、空気中にばらまかれる。
→トイレに行ったら、そのトイレは自分の体からのウイルスで汚れる。
→外で触ったもの全てに、自分の体のウイルスがついてしまい、汚染してしまう。

※以上が、パルボウイルスを発症した猫と、その猫のお世話をしている方の考え方です。
一部、コロナウイルス対策としてわかりやすいように書き換えていますが、
とにかく「自分がウイルスを持っている(かもしれない)」という意識が大切と思います。

◎自分が持っているウイルスをばらまかないために、出来ることは??

1、できるだけ出歩かない
→「家の中は汚染されている、ウイルスがいる」
「家の外はクリーン、ウイルスはいない」
という考え方は、今までとは真逆だと思いますが、
宮沢先生の情報にもあるとおり、これからはこの発想が必要なんだと思います。

2、といっても、病院とかスーパーとか、最低限行かなければいけない。
→自分の体についているウイルスを、できるだけ広げないようにする。
外に出たときは、できるだけ声を出さない。口で息をしない。
声を出すときはマスク越しで(マスクをしていれば、唾液はマスクで止まります)。
トイレに行ったあとは、蓋を閉めて流す(排泄物からの飛び散りを防ぐため)。

外に出たときに、触る部分をできるだけ少なくする。
自分の服も鞄も全てウイルスがついているかもしれない、と考える。
鞄を置いた場所、服を脱いで置いた場所、それらもウイルスで汚れる可能性がある、と考える。

触ってしまった場所は、触ったあとに、その部分を消毒薬で消毒する。
※できれば、消毒薬を持ち歩くのがいいと思います。
手指用のアルコール消毒液は品薄で手に入りにくいかもしれませんが、まだ他の種類の消毒薬は手に入りますし、
パルボウイルスに効果があるくらいの、強力な消毒薬もあります。
必要あれば動物病院で処方してもらうことも可能かと思います。
(お近くであれば、当院にご連絡いただければ、消毒薬をお分けいたします)

◎最後に、やっぱり、外からウイルスをもらってくる可能性もある。

家の外と中を分ける境界線、玄関でウイルスを防ぐ

自分がウイルスを持っている可能性を考えて行動してきましたが、
やっぱりもちろん、外から持ってくる可能性もあります。
そういうときどうするか、厳密に考え始めたらきりがありませんが
玄関を一つの境界線として、意識してもらったらわかりやすいと思います。

1、外から帰ってきた。自分の体の外側についているウイルスを取り除く。
→ウイルスがついていそうなものは、玄関で全て外す
→密度の高い場所などに行ったときは、髪や皮膚にウイルスがついている可能性もあるので、
服も全て脱いで風呂に直行する。服はすぐに洗濯するか、消毒薬をかける。

※上着、鞄、靴、ウイルスが付着していそうなものは、玄関で全て取って、
消毒液があれば、消毒液を振りかけるといいと思います。
実際のパルボウイルス感染の現場では、玄関からほぼ裸で風呂に直行する、というパターンも非常に多いです。
お湯で洗い流せば、ウイルスの数を減らせるので、感染リスクは下がります。

2、自分の体(の内側)からウイルスをできるだけ取り除く。
→感染源として言われている、手、喉、からウイルスを取り除くため、
手洗い、うがいをする。
※私の個人的な意見ですが、鼻うがいも効果があるのではないかと思っています。
(私事ながら、副鼻腔炎の治療で毎日鼻うがいをしていて調子がいいのと、
嗅覚異常が出るとのことなので、嗅上皮付近まで洗える鼻うがいが予防効果あるのでは?と勝手に思っています。
エビデンス等はなく、個人の感想です。ご了承ください。
鼻うがいの方法にはコツがいるので、実施にあたってはネットなどでやり方をよくご確認ください)

→健康的な生活。ストレスのない生活。
※再び個人的な意見ですが、関西はとても乾燥しているので、保湿も重要と思います。
(個人的には、洗濯物の室内干しが乾燥の解消にとてもいいと感じています)

以上、いち獣医師からのコメントですが、感染を拡げないために考えていることを書きました。
パルボウイルスはかなり感染力が強いため、身に着けている服やカバンや、時には靴にも注意を払うので、
コロナウイルス対策としてはやりすぎなのかもしれませんが…
考え方として、ひとつでも参考になれば幸いです。

とくに、消毒液に関しては、アルコール消毒が言われていますが
アルコールは手指の消毒に使いやすいため推奨されていて、確かに使いやすいのですけど
最近は品薄ですし、
動物医療領域でも、他にもよく使われている消毒液はいくつかあります。
「バイオウィル」「ナノクリーナ」など、ご参考になさってください。
また質問などありましたら、わかる範囲ではありますが、回答させていただきますので
お声かけいただければと思います。

獣医師 緒方

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